年が明け、H23年になり早くも2月になりました。ちまたではインフルエンザやノロウィルスをはじめとしたウィルス性腸炎疑いの患者さんが毎日来院されます。もちろんいわゆる“ただの風邪”の方が最も多いですが、最近突然の腹痛・下痢の症状の患者さんも多く、その中でも下血を伴ってびっくりして飛んでこられる方が意外と続いてますねえ。この症状のほとんどが『虚血性腸炎』という明け方に多い突然の腹痛・下痢やがて下血を伴う腸炎です。このところ結構数人続いてます。寒いからか?ストレスや便秘が引き金になることが多く、動脈硬化や糖尿病などとも関連が指摘されている病気です。
 以下に少し文献をネットから抜粋してみました。当院は大腸肛門疾患を専門としている関係か、結構多いです。まあ比較的大腸疾患の中では頻度の高い日常的に遭遇しやすい疾患です。ちょっと難しいかもしれませんが、参考までに一度読んでみてください。ヨロシク。 
虚血性腸炎
1.虚血性大腸炎とは
大腸の血流障害により大腸粘膜に炎症や潰瘍が発症し、突然の腹痛と下痢・下血を来たす疾患です。この疾患は、血管側と腸管側それぞれの問題が複雑に絡み合って発症すると考えられています。
血管側の問題として動脈硬化や血栓・塞栓などが挙げられ、高齢者や糖尿病・高脂血症などの動脈硬化や血流低下をきたす基礎疾患を持つ方に発症しやすいといわれています。また腸管側の問題としては、慢性便秘や浣腸などによる腸管内圧の上昇が挙げられます。好発部位は、図のように主に左側の大腸で脾彎曲部や下行結腸、S状結腸に好発します。
2.症状と診断
突然の腹痛と下痢,下血で発症します。症状の経過や発生部位(左側の大腸)と、その他の出血をきたす腸炎(感染性腸炎,抗生物質起因性腸炎,大腸憩室炎,潰瘍性大腸炎,クローン病など)や大腸癌を除外することで診断されますが、注腸造影や下部消化管内視鏡、病理組織にそれぞれ特徴的所見がみられるため診断は比較的容易です。また、その重症度から一過性型と狭窄型、そして壊死型の3型に分類されます。壊死型は重症であり、緊急手術の適応となりますが極めて稀です。
3.治療
基本的には入院治療であり、腸管の安静と全身状態を良好に保つための対症療法を行います。絶食のうえで輸液と抗生物質投与などの保存的治療により数日間経過を観察し、腹痛に対しては鎮痙薬を使用します。症状が軽快してくれば食事開始可能となります。一過性型では短期間のうちに完治しますが、狭窄型では狭窄解除のために手術が必要となることもあります。
基本的には良性の疾患ですが、約10%に再発はとされ、危険因子を多く有する例は再発率が高いと報告されています。
                               (日本消化器病学会より抜粋)
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<病型分類>
従来は一過性型、狭窄型、壊死型の3型に分類されていましたが、重症度が前2者と壊死型で著しく異なるため、前2者を狭義の虚血性大腸炎としています。一過性型は粘膜、粘膜下層に病変がとどまり、浮腫、粘膜下出血が主体です(図3A B)。徐々に出血、浮腫が軽快し、粘膜が脱落し潰瘍が形成されます(図3C)が、通常1、2週間以内に、自然に回復します。狭窄型(慢性型)は、炎症がより高度で固有筋層まで達したもので、数週間から数ヶ月を経て、筋組織が線維組織に置き換わり、狭窄を来します。慢性の潰瘍と区域性の炎症の遷延が認められるようになると縦走潰瘍が形成され、クローン病などの炎症性腸疾患との鑑別が問題となる場合もあります。内視鏡による注意深い経過観察が必要です。
                            (日本大腸肛門病学会より抜粋)
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